西洋近世の絵画 概要
近世に入ると西欧ではルネサンスが始まり、必ずしも宗教画ではない絵画がでてきます。
また、芸術をおこなうには財力が必要で、教会や王侯貴族などの権力者がパトロンとなりました。
西洋絵画の劇的に変わり西洋絵画の古典が確立するのがルネサンス。
すべてがキリスト教中心であった中世が終わり、人間中心となる新しい価値観をもつ近世が約400年間にわたり続きます。
西洋近世に発展した西洋絵画の古典は、聖書や神話を題材に、遠近法と陰影法を駆使してリアルに描くのが特徴です。
教会や王侯貴族、豪商などがパトロンとなりました。
ルネサンスからマニエリスム、バロック、ロココあたりまでが西洋近世絵画の分類となります。
1400年頃〜 | ルネサンス ↓ | |
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1550年頃〜 | マニエリスム ↓ | |
1600年頃〜 | バロック ↓ | |
1700年頃〜 | ロココ ↓ |
ルネサンスとは
ルネサンス(ルネッサンス)とは、西ヨーロッパにおいて、およそ14世紀から16世紀中頃までおこなわれた、芸術運動のことをいいます。ギリシャ・ローマの古代芸術を理想としたため、かつては「文芸復興」ともいわれました。
ルネサンスから始まる近世絵画を古典主義ともいい、聖書や神話を題材に遠近法と陰影法を駆使してリアルに描くことが特徴です。
ルネサンス絵画の特徴は「人体把握」「空間性」「感情表現」です。
ルネサンス三大巨匠として、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロが重要です。
特にラファエロは画聖とも呼ばれ、古典主義のお手本として西洋絵画の保守本流となりました。
三大巨匠のほかに重要な人物として、「西洋絵画の祖」となったルネサンスの先駆者ジョット、ルネサンスの幕開けとなったボッティチェリがあげられるでしょう。
ジョットがルネサンスの基礎をつくり、ボッティチェリがルネサンスの本格的なスタートを切り、三大巨匠でルネサンスは頂点を極めました。
1200年頃〜 | 国際ゴシック ↓ | 初期ルネサンス ↓ |
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1400年頃〜 | 北方ルネサンス ↓ | |
1450年頃〜 | 盛期ルネサンス ↓ | |
1550年頃〜 | マニエリスム ↓ |
初期ルネサンス
ダ・ヴィンチらが活躍するいわゆるルネサンスより前、13世紀ごろから初期ルネサンスが始まります。
修道院や教会の宗教画のほか、商売で成功した有力商人の肖像画などが描かれます。
中世までの平面的・形式的な表現を脱し、立体的・感情的な表現が始まりました。
当時のイタリアでは都市国家が紛争を繰り返していました。
各都市では、十字軍遠征により増加した貿易で財をなした商人が台頭します。
また、ビザンツ帝国のイスラーム世界の侵略から逃れたギリシャ地域の文化人たちがイタリアに流入しました。
この結果、厳格な教会ではなく、財と知識をもつ文化人たちが人間性を回復するルネサンス(復興運動)をおこないました。
この時期にルネサンス絵画の扉を開いた画家たちを紹介します。
ジョット 「西洋絵画の祖」「ルネサンスの先駆者」
ジョット・ディ・ボンドーネ 1267年頃〜1337年 フィレンツェ郊外生まれ
感情表現をはじめて絵画に取り入れた西洋絵画の祖。
ルネサンス絵画を始めた重要人物。
イタリア各地から職人が集まり、ルネサンスの起点ともなった聖フランチェスコ聖堂の壁画制作に参加しました。
イタリア各地で礼拝堂や聖堂の壁画を手がけ、晩年にはフィレンツェ大聖堂総監督に任じられた当時最も有力だった芸術家のひとりでもあります。
感情表現、奥行きのある空間表現、正確な人体描写による写実的な絵画が特徴。
ただし、分類上はルネサンスではなく「後期ゴシック」とすることが多いです。
フラ・アンジェリコ
フラ・アンジェリコ(ベアート・アンジェリコ) 1390年頃〜1455年 ヴィッキオ生まれ
「フラ」とは修道士という意味。
ドメニコ修道会の敬虔な修道士でありながら、画家としても才能に溢れた人物。
絵を描くというのは芸術や自己表現ではなく、神の思し召しであり信仰生活の一部であった。
特に「受胎告知」を多く描き、15点が現存している。
『受胎告知』とは
『受胎告知』とは、詳しく解説。聖母マリアが救世主キリストを懐胎したことを告げる大天使ガブリエル
マザッチョ
マザッチョ(マサッチオ Masaccio) 1401年〜1428年 フィレンツェ
彫刻家や建築家に学び、絵画に消失点などを導入し、遠近法を完成させた。
ペストにより若くして亡くなったが、後の画家に多くの影響を与えた。
フィリッポ・リッピ
フィリッポ・リッピ 1406年〜1469年 フィレンツェ
フラ・フィリッポ・リッピともいわれ、「フラ」のとおり修道士であるが、後年還俗しているためフラをつけないのが普通。若い修道女と駆け落ちし問題となるが、パトロンであったメディチ家のとりなしにより還俗した。
フィリッポ・リッピが描くマリアは妻である元修道女がモデルであるとされる。
敬虔な修道士であったフラ・アンジェリコとは異なり、女性関係に奔放な人物であった。
ボッティチェリの師でもある。
ペルジーノ
ピエトロ・ヴァンヌッチ 1448年頃〜1523年 ペルージャ近郊
ペルジーノは通称で「ペルージャ人」という意味。
ヴェロッキオ工房出身で、極めて人気を博した画家。
ボッティチェリ・ギルランダイオとともにバチカンのシスティーナ礼拝堂の壁画を担当した。
ルネサンス三大巨匠のひとりラファエロの師。
ドメニコ・ギルランダイオ
ドメニコ・ギルランダイオ 1449年〜1494年 フィレンツェ
ルネサンス三大巨匠のひとりミケランジェロの最初の師。
ギルランダイオ自信もフィレンツェの人気画家であった。
ヴェロッキオ工房出身。
ヴェロッキオ
アンドレア・デル・ヴェロッキオ 1435年頃〜1488年 フィレンツェ→ヴェネツィア
画家としてではなく、教育者として重要な人物。
ルネサンス三大巨匠のダ・ヴィンチは弟子、ラファエロとミケランジェロは孫弟子にあたる。
ヴェロッキオはフィリッポ・リッピの弟子。
ヴェロッキオ本人も画家のほか彫刻家や建築家として活躍した。
ボッティチェリは弟子とも協力者ともいわれる。
弟子のペルジーノはラファエロの師となり、同じく弟子のギルランダイオはミケランジェロの師となった