日本で茶碗つくりが始まっておよそ400年
明治以降現代でも、さかんに作陶がおこなわれています。
江戸末期から明治にかけて、茶の湯は衰退期を迎えます。
各藩の御用釜として栄えた窯元は次々と閉鎖。
窯とともに多くの技術が失われていきました。
昭和になると、桃山期の茶陶などの失われた技術や知識を復興させるため、人生をかけた人たちがあらわれます。
復活に留まらず、新たな技術を開発したり、洋の東西を問わずさまざまな要素を取り入れたり、茶陶は百花繚乱の様相を呈し現在へとつながります。
ここでは、近代・現代の陶芸家として特に重要な人物を超簡単にですがご紹介します。
重要文化財とか歴史的な茶碗と違って、現代作家の作品は誰でも購入できるんですよね。
数十万円から数百万円しますが。。
個人的には、現代の作品にも歴史的な名椀に劣らない名椀があると思います。
もっとも、「名椀」とされるものはモノ自体が素晴らしいだけではなく、いろいろないわくや由来があるものですが。
現代陶工紹介
志野茶碗
加藤唐九郎(かとうとうくろう)(1898年〜1985年)
「伝統とは因襲をつきやぶること、血なんじゃ」
志野や黄瀬戸を極めた芸術家。
贋作事件で公の場から一時姿を消すが、生涯作陶を続けた。
加藤唐九郎「貫道」
荒川豊蔵(あらかわとよぞう)(1894〜1985年)
「古志野」を現代の復活させた。豊蔵の作る志野は「荒川志野」と呼ばれる。
作品は日本工芸会ホームページで。
鈴木蔵(すずきおさむ)(1934年〜)
荒川豊蔵や加藤土師萌に師事した志野焼の陶工。
作品は日本工芸会ホームページで。
(この中で唯一、鈴木蔵氏のお茶碗でお茶を頂いたことがあります。。緊張した。手のひらの中に時価数百万。。)
瀬戸
加藤土師萌(かとうはじめ)(1900年〜1968年)
瀬戸の出身であるが、唐津や備前の作品が多い。
釉裏金彩の技法や絵が特徴。
作品は日本工芸会ホームページで。
※釉裏金彩(ゆうりきんさい)
金箔や金泥等の金彩の上から釉薬をかけて焼成する技法。極めて難しい。
京焼
清水六兵衛(きよみず ろくべえ)
清水家の当主が襲名する名前。
当代は8代目。
王朝趣味のきれいで豪華な清水焼きを受け継ぐだけではなく、現代の茶碗として革新しつづける京焼を焼く。
作品は六兵衛窯へ。
永楽即全(えいらくそくぜん)(善五郎)
千家十職の永楽家の当主。
当代は17代目。
いかにも京焼といった絵付けのされたきれいな茶碗を焼く。
11代永楽保全作『金襴手葵御紋茶碗』
清水卯一(しみずういち)
鉄釉陶器の作家。
作品は五条坂清水HPで。
楽吉左衛門
言わずとしれた『樂焼』の当主が襲名する名前。
当代は15代。
非常に前衛的な作品を造ってきた当代の最近の作品がとても気になる。
詳しくは「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」レビューと楽しみ方。樂茶碗の基礎知識。
ほか作品は樂美術館ホームページで多数鑑賞できます。
備前
金重陶陽(かねしげ とうよう)(1896年〜1967年)
桃山の古備前を復興させる。
備前焼中興の祖。
作品は日本工芸会ホームページで。
萩焼
三輪休雪
三輪窯の当主が襲名する名前。
当代は12代目。
11代目三輪壽雪、10代目三輪休和
11代目の「鬼萩」シリーズは特に有名。
11代目三輪壽雪の作品は日本工芸会ホームページで。
10代目三輪休和の作品も日本工芸会ホームページで。
三輪壽雪『鬼萩窯変割高台茶碗』
ほか
北大路魯山人(きたおうじろざんじん)(1883年〜1959年)
志野・織部といった枠にとらわれない作風で、伝統というよりも芸術としての陶芸家として知られる。
川喜田半泥子(かわきた はんでいし)1878年〜1963年
自らも作陶を続けるかたわら、豊富な財力により「石水博物館」を設立したり、荒川豊蔵・金重陶陽らを支援した。
番外
徳田八十吉
九谷の作家です。
とっても綺麗。
茶碗は作っていませんが、個人的に好きなので掲載。
作品は4代目徳田八十
個人的に好きな茶碗
国宝や重要文化財に指定されていない茶碗の中から、好きな茶碗をちょっとだけピックアップ。
兎毫盞天目(禾目天目)
天目で一番好き。曜変天目より好きです。
腰のあたりの釉薬の貯まりもたまりません。
堅く締まった露胎の高台まわりも美しい。
姿も細く流れた釉薬もすべてが美しい。
青磁茶碗『満月』
磁器の茶碗は少ないですが、青磁はやっぱり美しいですね。
志野茶碗『振袖』
卯花墻よりも好きです。
これぞ志野。
沓型のいびつな形。
長石釉から透けて見える鉄絵。
赤く焼けた肌。
ザ・抹茶碗って感じです。
黒楽茶碗『利休』
長次郎の黒楽茶碗。
とても小ぶりでシンプル。
樂の原点的な感じがします(違いますが)。
黒楽筒茶碗 銘 雪の曙 長入作
一番好きな、というか、一番見たい茶碗です。
写真がありません。
というより、一度しか見たことがありません。
2009年の根津美術館『根津 青山の茶の湯』展に出展されていました。
以降音沙汰なし。
所蔵すら知りません。
展覧会の目録にも書いていない。
いつかまた会える日を夢見て。。
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1.基礎:茶碗の種類や名称を豊富な写真で
2.基礎:茶碗鑑賞のポイント、用語集
3.名椀・国宝茶碗一覧
4.名椀・重要文化財の茶碗一覧
5.近代・現代の茶碗
おまけ:国宝と重要文化財に指定された茶碗一覧。観賞用全リストPDFあり
東京都内で茶碗・茶陶の鑑賞ができる美術館・博物館一覧
茶碗写真の多くは「特別展『茶の湯』東京国立博物館 図録」「茶の湯のうつわ-和漢の世界-出光美術館 図録」より