西洋絵画の基礎知識05 西洋近世絵画「北方ルネサンス」

西洋絵画の基礎知識05 西洋近世絵画「北方ルネサンス」

西洋近世絵画、北方ルネサンスのフランドル、ドイツ・ルネサンス、ヴェネツィア派がわかりやすい。大人として知っておきたい教養、名画・西洋絵画の基礎知識。

ルネサンス年表
1200年頃〜国際ゴシック
初期ルネサンス
1400年頃〜北方ルネサンス
1450年頃〜盛期ルネサンス
1550年頃〜マニエリスム

北方ルネサンス

イタリアではじまったルネサンスは、15世紀後半になるろヨーロッパ諸国に広がり、特に北ヨーロッパでのルネサンス運動を北方ルネサンスという。イタリア以外のルネサンス運動を北方ルネサンスということもある。
それぞれの地域別にみるときは、
ドイツ・ルネサンス
フランス・ルネサンス
イングランド・ルネサンス
ネーデルラント・ルネサンス
ポーランド・ルネサンス

のように呼称するほか、フランドル地方では初期フランドル後期フランドルとして特に区別することがある。

フランドル(北方ルネサンス)

現在のベルギーに位置するフランドル地方を領有するブルゴーニュ公国では、裕福な商人がパトロンとなり初期フランドル絵画が花開きました。
油彩画が発明され、当時の日常の風景を宗教画や肖像画として、写実的で緻密に描きました。

15世紀後半になると、経済の発展のほか宗教改革の影響もあり、市民階級が台頭してきます。
絵画も市民階級にあわせた世俗的な風景画や風俗画が描かれるようになります。
また、本場イタリアのルネサンスを学んで帰ってきた画家たちもフランドル地方の芸術に影響を与えました。

ヤン・ファン・エイク

ヤン・ファン・エイク 1390年〜1441年 マースエイク出身 ブルッヘで活躍

油彩技法を確立した画家で「神の手を持つ画家」と呼ばれた。
当時まだ草創期であった油彩で、溶いた油を薄く塗ることで重ね塗りによる立体的な質感表現を可能とした。
油彩を利用した緻密な描写を得意とし、ブルゴーニュ公国のフィリップ善良公の宮廷画家として活躍。宮廷だけではなく個人の依頼による絵画も作成している。

初期フランドル ヤン・ファン・エイク『アルノルフィーニ夫妻』1434年 油彩 81.9×59.9cm
はじめて描かれた油絵による精緻な絵画として、西洋絵画史史上極めて重要な作品。
画中の凸面鏡には立会人が描かれており、結婚の立会のシーンではないかと考えられている。
市民の日常生活を描いた最初の作品の風俗画ともいわれる。

ヒエロニムス・ボス

ヒエロニムス・ボス 1450年頃〜1516年 北部ネーデルランド

今みても新しい奇想の画家。その作風から、熱心なカトリック教徒でありながら異端の疑いもかけられました。
代表作『快楽の園』をみれば、これほどの奇想に満ちた作品が500年以上前に描かれていたことに驚愕します。

初期フランドル絵画 ヒエロニムス・ボス『快楽の園』1503〜1504年 油彩 220×389cm
パネル3枚で1組の絵画。中央は現在、左がエデンの園、右が地獄。

ブリューゲル(父)

ピーテル・ブリューゲル 1525年〜1569年

ヒエロニムス・ボスを受け付いだフランドルの画家 ピーテル・ブリューゲル。
長男も同名なうえに画家として活躍したため、ブリューゲル(父)のように表記されることがある。
代表作である『バベルの塔』のような寓意画を描くが、晩年にはフランドルに暮らす農民画を多く描いたため「農民画家」とも呼ばれる。

後期フランドル絵画 ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』1563年頃 油彩
旧約聖書の「創世記」にある「バベルの塔」を題材とした。
「バベルの塔」は神へと挑戦するような天へも届く塔を建設しようとして神の怒りを買い崩壊した塔のこと。
神は言語がひとつである業が原因であるとして、言葉を乱した(人々は多くの言語を話すようになり散っていった)とある。

ドイツ・ルネサンス(北方ルネサンス)

現在のドイツにあたる「神聖ローマ帝国」に、イタリアに学んだデューラーがルネサンスをもたらし、ドイツにあったゴシックと融合し確立されたドイツ・ルネサンス。
ドイツ皇帝を世襲するハプスブルク家などの王侯貴族がパトロンとなり、独自の宗教画が描かれた。
後にドイツで興った宗教改革により混乱が訪れ、ドイツで活動した画家たちは失業したり、イングランド等他国に逃れたり、プロテスタントの画家となったりしました。

アルブレヒト・デューラー

アルブレヒト・デューラー 1471年〜1528年 ニュルンベルク出身

ドイツにルネサンスをもたらしたドイツ・ルネサンスの第一人者であり、はじめて画家の単独自画像を描いた。「神の画家」。

ドイツ・ルネサンス アルブレヒト・デューラー『自画像』1500年
ナルシストであったデューラーは多くの自画像を描いたが、それまで君主や聖者にのみ許された正面からの自画像を単独自画像として初めて描いた。
顔はキリストに似せ、右手は画家としてのプライドをあらわしている。
アルブレヒト・デューラー『野うさぎ』1502年 紙に水彩とガッシュ

ヴェネツィア派(北方ルネサンス)

ルネサンスの中心地であったフィレンツェに対して、16世紀にヴェネツィア共和国で発展したルネサンスをヴェネツィア派という
ボッティチェリやダ・ヴィンチなどの超有名なルネサンスの画家たちフィレンツェ派はデッサンを重視した。一方ヴェネツィア派は色彩を重視した美しさで人間の感覚に訴えた。
東方貿易で栄え「アドリア海の女王」と呼ばれたヴェネツィアでは、帆布であるカンヴァスに油絵で描く絵画が好まれた、宗教的制約も少なく世俗的・享楽的な宗教画が描かれた。

ティツィアーノ

ティツィアーノ・ヴェチェリオ 1488年頃〜1576年

ルネサンス最後の巨匠。ヴェネツィア派の第一人者。
ヴェネツィア共和国の専属画家となり、ローマ教皇庁からの招聘も断った人気画家。
モデルとなった人物の長所を捉え理想化し、今でいう「盛った」表現を得意とし、躍動感に溢れる作風は王侯貴族に人気を博した。
代表作である『ウルビーノのヴィーナス』以降、数多くの画家が同じ構図の「横たわる裸婦像」を描いた。
※ポルノ認定されるため『ウルビーノのヴィーナス』の絵画画像は非掲載

兄弟子のジョルジオーネは、ルネサンス史上初の横たわる裸婦像『眠れるヴィーナス』を描いた。å

ルネサンス ヴェネツィア派 ティツィアーノ・ヴェチェリオ『聖母被昇天』1516〜1518年 油彩 カンヴァス 690×360cm
ティツィアーノのもうひとつの代表作である祭壇画
カトリック教会では、聖母マリアは肉体を持ったまま昇天したとされている。
中央の赤い衣服に青いマントの女性が聖母マリア。上には父なる神と、大天使ミカエルのほか天使が描かれる。
下の使徒たちは鑑賞者と同じ視点にあり、鑑賞者とともに聖母を見上げる大胆な構図となっている。

次に読む記事